第6回 RIPS 公開セミナー2008「近隣大国の軍事力と我が国の兵器技術情報管理」
第1日目:「ロシアの軍事近代化の現状」
日 時 |
2008年9月8日
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講 演 |
工藤 天彦 氏(元 在露国防衛駐在官)
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第2日目:「中国の軍事近代化の現状」
日 時 |
2008年9月16日
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講 演 |
大澤 洋一 氏(元 在中国防衛駐在官)
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第3日目:「我が国をめぐる情報活動の実態と課題」
日 時 |
2008年10月1日
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講 演 |
長谷川 忠 氏(CR&S総合研究所)
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第4日目:シンポジウム「軍事情報保護と日米同盟」
日 時 |
2008年10月8日
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基調講演1 |
"Bilateral Security of Information Issues"(二国間情報保護の諸問題)
ピーター・A・バッテン 氏(米国防総省 国防副長官室)
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討論会 |
「日米共通の軍事情報保護のや枠踏みを求めて」
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発題 |
「日米GSOMIAの特性と課題」
松村 昌廣 氏(桃山学院大学 教授)
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第1セッション |
「日米両政府間の諸問題と課題」
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パネリスト |
松村 昌廣 氏(桃山学院大学 教授)
ピーター・A・バッテン 氏(米国防総省 国防副長官室)
ジェフリー・A・ブルーム氏(米国防総省 国防副長官室)
田部井 貞明 氏(防衛省 防衛政策局 調査課 情報保全企画室長)
中原 裕彦 氏(経済産業省 知的財産政策室長)
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第2セッション |
「日本政府と防衛企業間における諸問題と対応」
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パネリスト |
同上
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(肩書は講演当時のもの)
第4日目:シンポジウム「軍事情報保護と日米同盟」
日 時 |
2008年10月8日
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基調講演1 |
"Bilateral Security of Information Issues"(二国間情報保護の諸問題)
ピーター・A・バッテン 氏(米国防総省 国防副長官室)
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討論会 |
「日米共通の軍事情報保護のや枠踏みを求めて」
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発題 |
「日米GSOMIAの特性と課題」
松村 昌廣 氏(桃山学院大学 教授)
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第1セッション |
「日米両政府間の諸問題と課題」
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パネリスト |
松村 昌廣 氏(桃山学院大学 教授)
ピーター・A・バッテン 氏(米国防総省 国防副長官室)
ジェフリー・A・ブルーム氏(米国防総省 国防副長官室)
田部井 貞明 氏(防衛省 防衛政策局 調査課 情報保全企画室長)
中原 裕彦 氏(経済産業省 知的財産政策室長)
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第2セッション |
「日本政府と防衛企業間における諸問題と対応」
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パネリスト |
同上
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(肩書は講演当時のもの)
2007年8月に日米間で軍事情報の保全に関する協定(GSOMIA)が締結されたことにも象徴されるように、近年、日米間においてシェアされる軍事技術情報の保護が、新たな同盟の課題として浮上している。このような情勢の中、平和安全保障研究所では、軍事情報保護の役割や協定の今後の運用課題などについて理解を深め、我が国における政策基盤を強化することを目的として、講演、討論を中心としたシンポジウムを開催した。
出席者は、本研究所からは西原正理事長、安全保障研究奨学プログラムの修了生で桃山学院大学教授の松村昌廣氏、米国防省からはピーター・A・バッテン氏(国防副長官室)とジェフリー・A・ブルーム氏(国防副長官室)、日本政府からは田部井貞明氏(防衛省防衛政策局調査課情報保全企画室長)、中原裕彦氏(経済産業省知的財産政策室長)であった。
第1部では、米国側から、日米同盟における軍事情報保護の役割について、講演がなされた。続く第2部では、日本側の研究者、実務当局者を交えて、パネルディスカッションが行われた。以下、重要と思われる点を記しておきたい。
第1部 講演 日米同盟における軍事情報保護の役割
冒頭にブルーム氏から挨拶がなされ、軍事情報保護は日米の防衛産業間協力の緊密化のためには重要であり課題もあるが、それらは解決されるべきものであるとの見解が提示された。続いて、バッテン氏から「Bilateral Security of Information Issues(二国間情報保護の諸問題)」と題して講演がなされた。講演では、まず、「軍事情報保護」の目的、カウンターパートの担当部署の能力と意図を詳しく知ること、情報保護プログラム作成の重要性、コンセプトや原則の確立などの重要性が強調された。続いてアメリカ側としては日本政府が政府全体の情報保全の政策を持っているかを重視していることが述べられた。続いてアメリカの例を参考に、実務的なレベルでの法令運用、脅威認定、文書取扱、人事管理などの原則が紹介され、同様の側面から日本側の運用状況について注目していることが述べられた。
非常に包括的かつ詳細な説明であり、軍事情報保護が米国においてはすでに一つの重要な政策分野として確立していることを強く印象付けるものであった。
第2部 討論会 日米共通の軍事情報保護の枠組みを求めて
第2部では、まず松村氏から「日米GSOMIAの特性と課題」として発議がなされた。この中で松村氏はGSOMIAの基本概念、締結された経緯、各国制度の国際比較などを踏まえて、日本においては、その政治的な意味合いが十分に理解されていないこと、法令や罰則に不備が目立つこと、また省庁ごとの対応にばらつきが目立つことなどを問題点として挙げた。
続いて、パネルディスカッションの第1セッション「日米両政府間の諸問題と対応」で政府レベルにおける情報保全の問題について論じた。松村氏を司会に、米側からはバッテン氏とブルーム氏が、日本側からは田部井氏と中原氏が参加した。議論の中では、田部井氏が防衛省ではすでに現行の法令や細則等により必要な情報保護は行われており、GSOMIAに規定されている主旨は達成可能であるとの見解が示された。中原氏は一般原則の必要性は認めながらも、民主主義下における政府の情報管理の在り方を踏まえながら、今後の情報管理の在り方は個別の事情に応じて検討すべきとの考えであった。これらについてアメリカ側から日本に対しての懸念や改善要求はあるかとの松村氏からの質問に対して、バッテン氏、ブルーム氏からはあくまで個別の国情に応じた制度設計と運用があってしかるべきであり、日本に対して具体的な要求を出すつもりはないことが示された。
第2セッションでは同じ出席者により「日本政府と防衛企業間における諸問題と対応」として、主に政府と民間企業の間でシェアされるにおける軍事情報の取り扱いについて議論を行った。
松村氏によれば、アメリカではNISPOM(National Industrial Security Program Operating Manual)という統一基準があり、政府省庁間にとどまらず、官民間においても、統一の基準が普及している。日本ではそのような基準が存在していないことが問題点として提起された。これに対し、田部井、中原両氏は、防衛省、経済産業省とも民間に対しては所管法令の適用や、契約締結時の特約事項などの既存の枠組みによって情報の流出を防ぐという立場が示された。バッテン氏、ブルーム氏から、アメリカでは統一的かつ簡便な形のNISPOMを基準として用いることで、二重行政などの非効率的な事態を回避でき、また民間セクターの負担を軽減しているとして、その意義を認めながらも、どのような基準を作成するかはあくまで、各国が国情に応じて独自に判断すべきものとした。