2015年12月1日(火)、平和・安全保障研究所(RIPS)は「第8回RIPS関西安全保障セミナー2015」を、大阪大学大学院国際公共政策研究科との共催、独立行政法人 国際交流基金日米センターの助成により、大阪大学中之島センター佐治敬三メモリアルホールにて開催しました。
今年は、「積極的平和主義と日本の安全」と題して、第二次安倍内閣が打ち出す積極的平和主義と、2015年9月に成立した一連の平和安全法制との関係に焦点を当てました。当日は、年の瀬に入った忙しい時期にも関わらず、約160名のご参加を得ました。
本セミナーでは、まず西原正・当研究所理事長の「開会の挨拶」に続いて、村田晃嗣氏(同志社大学学長)による基調講演が行われました。
講演において村田氏は、まず第二次世界大戦後70年かけて蓄積してきた日本の安全保障政策を「消極的平和主義」と位置付け、その実行の蓄積に関して積極的に評価すべき点を検証する作業が欠けていたことが大きな反対運動につながった一因ではないかという所感を述べられました。
他方、平和安全法制として11もの法案が一括して国会審議に掛けられた「複雑性」、重要影響事態等の法案のカギとなる概念の「抽象性」、法案についてもっぱら憲法の問題に焦点が当たってしまった「プロセスの問題」、また経済再生等の多くの政策課題の中で安全保障問題を優先した「政策の優先順位」の問題を挙げ、政府側の説明に関する問題点についても指摘されました。
基調講演の後、西原正・当研究所理事長の司会のもと、楠綾子氏(国際日本文化研究センター 准教授)、番匠幸一郎氏(陸将 / 前 陸上自衛隊西部方面総監)、ロバート・D・エルドリッヂ氏(元 米国海兵隊太平洋基地政務外交部次長)がそれぞれパネル発表を行いました。
楠氏は外交史の立場から、冷戦期からの日米安全保障条約をめぐる日本の安全保障政策の変遷を整理するとともに、歴史的経過における平和安全法制の位置付けと法制の運用に際しての国内政治上の課題について講演されました。
番匠氏は自衛隊の現場の立場から、日本をめぐる安全保障情勢がどう「厳しい」のかという評価の具体的内容、その情勢に対応する自衛隊の基本構想としての「統合機動防衛力」、平和安全法制の意義と今後の課題に関して意見を述べられました。
エルドリッヂ氏はアメリカの立場から、平和安全法制は国際的に大きく評価されており、アメリカ国内での世論調査で日本に対する好意的評価が84%に上ることが紹介されたのち、今回の法制への期待の大きな裏付けであると述べました。また特に、人道支援分野での日本の国際貢献の発展可能性とその効果として日米の相互信頼の進展についての示唆を提示されました。
その後に行われたパネルディスカッションと質疑応答では、登壇者同士や会場との間で活発な議論を行うことができました。
なお、今回のセミナーでは当研究所の人材育成事業「奨学プログラム」の修了生である村田晃嗣氏(第4期)と楠綾子氏(第12期)により講演・パネル発表が行われ、また、星野俊也氏(大阪大学 副学長 / 第7期)は共催側を代表して閉会の挨拶をしました。今回のセミナーも修了生の活躍を直接目にする良い機会ともなりました。
※当セミナーの講演・パネル発表の内容は、各登壇者の所属先の見解を代表するものではありません。
参 考 情 報
「積極的平和主義と日本の安全」
[共催] 一般財団法人 平和・安全保障研究所 / 大阪大学大学院 国際公共政策研究科
[助成] 独立行政法人 国際交流基金 日米センター
【日時】 2015年12月1日(火) 14:00~17:00
【会場】 大阪大学中之島センター10階 佐治敬三メモリアルホール
【会費】 無料
【時程】14:00 開会の挨拶
14:10 基調講演「積極的平和主義と日本の安全」
村田 晃嗣 氏 (同志社大学 学長)
15:15 パネル発表
(司会) 西原 正(一般財団法人 平和・安全保障研究所)
・楠 綾子 氏(国際日本文化研究センター 准教授)
・番匠 幸一郎 氏(陸将 / 前 陸上自衛隊西部方面総監)
・ロバート D. エルドリッヂ 氏
(元 米国海兵隊太平洋基地政務外交部 次長)
16:20 パネル討論及び会場との質疑
16:55 閉会の挨拶(星野 俊也 氏 / 大阪大学 副学長)
※共催や助成の機関名および講演者等の肩書はすべて開催当時のものです。