第3回 関西安全保障セミナー2010「東アジアの脅威と日本の対応」
平和・安全保障研究所では、関西方面における活動を展開するため、2008年から「関西安全保障セミナー」を行っている。第3回目となる今回は、12月10日(金)、大阪大学大学院国際公共政策研究科国際安全保障政策研究センターと共催で、大阪大学中之島センターで開催した。また、会の開催にあたり、国際交流基金日米センターの助成を受けた。当日は師走の多忙な時期にもかかわらず、大学、企業、防衛省などから多くの参加があった。
セミナーは、当研究所安全保障研究奨学プログラム第7期生である司会者の星野俊也氏(大阪大学大学院教授)の挨拶、西原正(当研究所理事長)による挨拶に続き、第1部の金田秀昭氏(元海上自衛隊護衛艦隊司令官)による基調講演が行われた。第2部では星野氏を司会として、浅野亮氏(同志社大学教授/同プログラム第1期生)、中西寛氏(京都大学大学院教授/同プログラム第5期生)、小谷哲男氏(岡崎研究所特別研究員/同プログラム第13期生)、金田氏のパネリストによるパネルディスカッションが行われた。
「中国海軍の外洋進出とその影響」と題した基調講演で金田氏は、中国および東アジアの軍事情勢と中国海軍を巡る脅威の態様に触れた。中国が開発中の兵器システム、運用能力の特徴などに触れたうえで、なぜ伝統的大陸国家たる中国が海洋進出に積極的であるのかを説明した。さらに日本の対中軍事方策や防衛政策などについて意見を述べた。金田氏は先般発表された防衛大綱の「動的防衛力」の概念を評価しながら、常に南西諸島に自衛隊のプレゼンスを維持することや、自衛隊と地元住民との信頼醸成の重要性を説いた。
続く「東アジアの脅威と日本の対応」と題したパネルディスカッションでは、金田氏の講演を踏まえ、議論を行った。浅野氏は中国の政軍関係を中心に報告し、依然として中国の安全保障政策の決定の仕組みが整理されておらずかつ不透明であり、単に軍事面だけではなく政治権力闘争の側面を観察する必要があると指摘した。小谷氏は中国海軍の増強に対して米国の認識と対応策について述べた後、自衛隊のより積極的な役割分担が必要であると指摘した。中西氏は国際政治学の観点から中国の台頭がグローバルに波及する諸々の影響について述べた後、政治、経済、社会など多様な側面に注目し、中国を国際政治のルールの中に取り込むことが重要であると述べた。
この後、金田氏のコメントと会場からの質疑を交え、大変活発な議論が繰り広げられた。議論の中では不透明さを増す朝鮮半島情勢や中国国内情勢、また我が国の安全保障政策に関しては、韓国との連携強化や対ASEAN外交の重要性が論じられた。
セミナーの後、懇親会が開催され、関係者、参加者たちとの間で賑やかな交流が行われた。今後も本セミナーを継続することに対して強い期待が寄せられ、関西における安全保障研究への関心の高さが伺われた。参加者は皆、来年度の再会を約束して会は幕を閉じた。
参 考 情 報
第3回 関西安全保障セミナー 2010
[共催]一般財団法人 平和・安全保障研究所 / 大阪大学大学院 国際公共政策研究科 国際安全保障政策研究センター
[助成]独立行政法人 国際交流基金 日米センター
<基本要領>
【日時】2010年12月10日(金)
【会場】大阪大学中之島センター10階 佐治敬三メモリアルホール
【会費】無料
<懇親会>
【時間】17:30~19:30
【場所】大阪大学 中之島センター9階 交流サロン
セミナー詳細
<基調講演>
金田 秀昭 氏(元 海上自衛隊 護衛艦隊司令官)
「中国海軍の概要進出とその影響」
<パネル討論:東アジアの脅威と日本の対応>(司会:星野 俊也 氏 / 大阪大学大学院 教授)
〇浅野 亮 氏(同志社大学 教授)
〇中西 寛 氏(京都大学 教授)
〇小谷 哲男 氏(岡崎研究所 特別研究員)
〇金田 秀昭 氏(元 海上自衛隊 護衛艦隊司令官)