開催報告
2021年7月16日にRIPS新旧理事長座談会「明日の日本の戦略:外交と防衛」を開催いたしました。2021年6月の理事会をもって西原正が理事長から副会長に異動し、新たに德地秀士が理事長に就任いたしました、今回のウェビナーはこの理事長の交代を記念して岩間陽子氏(政策研究大学院大学教授/当研究所理事)の司会のもと開催されました。
ウェビナーではウェビナーでは西原が日本外交の観点からこれまでの日本外交について議論をし、德地が日本の防衛政策の観点から議論を行いました。西原は戦後の日本外交は大きな戦争を経験することなく現在まで至っているという意味では概してうまくいってきたと評価し、その理由として日米同盟、米国やアジア諸国との経済関係、米国や欧州をはじめとした民主主義諸国との関係などを挙げました。そして、第二次安倍政権以降の日本外交に見られる新しい取り組みとして、ミャンマーからの難民受け入れなど難民政策の転換に代表される価値観外交の展開を挙げました。
一方で、戦後日本外交の課題として、ロシア、中国、北朝鮮といった周辺諸国との外交関係を挙げました。これら諸国との間には戦後の未解決の問題が存在しており、ロシアや中国とは国交正常化後、40年以上経過しながら解決できていないことは残念であると指摘しました。また、日本外交におけるもう一つの課題として、国際連合安全保障理事会の常任理事国を目指しながら、軍事力の行使には躊躇するというような「一貫性の欠如」を指摘しました。
つづいて德地は日本の国家安全保障戦略、防衛政策という観点から議論しました。まず德地は戦略について「自国の現在の立ち位置と将来のあるべき位置を設定し、その間の道筋を示すもの」と定義し、現在の国家安全保障戦略が策定された8年前と比べて今の日本の立ち位置は大きく変わったと指摘した。冷戦後の世界は目指すべ方向性について明確な定義を欠いたものであったが、德地は現在の日本が目指すべき方向性は「ルールに基づくリベラルな国際秩序の実現」であるということが明確になっているように思われると指摘しました。
これに対して、德地は中国について、非常に強い民族意識、主権意識、権力志向が見られるが、一方で西側の言葉でそれらを表現していると指摘したました。こうした中国の動き対して、德地は日本や欧米諸国諸国の側が自分たちの持つ秩序概念について明確に分かりやすい形で再提示することが求められているのではないかとの考えを示しました。
そして、このように日本の立ち位置が変化し、目標の再定義が求められている中で、これらの間をつなぐ道筋も変わらざるを得ないと評価しました。現在の日本の国家安全保障戦略の柱は、日本自身による自助努力、日米同盟、諸外国との安全保障協力の三本柱であり、德地は、これらの三本柱は大きく変わらないだろうが、その内容は質的にもさらに充実させていく必要があるだろうと指摘しました。
西原と德地の報告の後、岩間氏の司会の下で活発な議論が展開されました。詳しい座談会の模様は当研究所のYouTube チャンネルで公開しておりますので、ぜひご視聴いただけますと幸いです。
参考情報
日時 | 7月16日(金)18:30~20:00 |
プログラム |
18:30 開会の挨拶 18:35 【パネリスト報告】 19:05 【パネルディスカッション】 質疑応答 20:00 閉会の挨拶
〇登壇者 パネリスト 西原 正 (平和・安全保障研究所 副会長) 德地 秀士(平和・安全保障研究所 理事長)
司会 岩間 陽子(政策研究大学院大学 教授)
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参加費 |
無料 |
主催 | 一般財団法人 平和・安全保障研究所 |
お問い合わせ
一般財団法人 平和・安全保障研究所
セミナー担当
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