京都安全保障セミナー
「米中対立と今後の国際秩序」
2019年10月5日(土)、平和・安全保障研究所(RIPS)は同志社大学との共催、国際交流基金日米センターの助成により、同志社大学良心館において「京都安全保障セミナー」を開催した。今回は、「米中対立と今後の国際秩序」をテーマに今後の国際秩序の展望やそれに対する日本の取るべき政策について議論した。
本セミナーでは、はじめに細谷雄一氏(慶應義塾大学教授)が「米中対立と今後の国際秩序」と題した基調講演を行った。
細谷氏はまず国際秩序を歴史的観点から見る時、パワーの分布が重要であると指摘した。具体的には、冷戦直後のようにパワーが特定の一国に集中しているのか(単極)、冷戦時代のように二つの国に集中しているのか(二極)、19世紀前半のウィーン体制のように複数の大国が存在しパワーが分散しているのか(多極)によって、国際秩序は大きく異なると論じた。そして、現状は「中国が台頭する一方、米国が相対的に衰退した『無極の時代(Gゼロの時代)』であり、こうした『無極の時代』になると(日本は)同盟や国際機関に頼れなくなっていくだろう」と指摘した。
また、細谷氏は、最近では「権威主義体制の復活も顕著になってきている」と論じた。中国はインターネットの監視システムなどの自国の統治システムをアフリカ諸国に輸出している。この統治システムはクーデターやテロへの対策に有効であり、逆に欧州や米国、日本のような民主主義諸国はインターネットなどを通じた工作活動に脆弱であると指摘した。さらに、こうした中国の監視技術の発展と合わせて、中国は5G技術に代表される先端技術の開発を進めてきた。その結果、5G技術では、すでに米国が追いつけないほどの技術力を保有するまでになった。
そして、細谷氏は米中対立の現状を「中国に有利に展開しているものの、米国のパワーは依然として強大であり、他国を大きく引き離している」と分析した。そして、米中対立の中で、日本にできることとして次の二点を挙げた。一つは、「パワーポリティクスへの回帰にブレーキをかける」、すなわち、「国際法や国際機関といったルールに基づく秩序を擁護する立場に立つべき」であると主張した。そして、二つ目として、「リベラル・デモクラシーの擁護」を挙げ、戦前の権威主義体制の経験から、「日本はリベラル・デモクラシーを擁護する義務がある」と主張した。
基調講演の後、村田晃嗣氏(同志社大学教授)の司会によりパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションではまず浅野亮氏(同志社大学教授)が中国の観点から現在の米中対立について報告した。浅野氏は「急速な少子高齢化や人口減少によって長期的に見ると中国のパワーは低下していくだろう」と指摘する一方で、「5G技術に代表されるように中国のパワーがこれから増大していくこともまた事実であり、中国の将来を即断することはできない」と論じた。また、仮に朝鮮半島が統一し、朝鮮半島が中国寄りとなる一方で、日本が米国寄りとなった場合、「同盟国の動きに米中という大国が引きずられていくことも起きるかもしれない」と指摘した。
つづいて、簑原俊洋氏(特定非営利活動法人インド太平洋問題研究所理事長/神戸大学大学院教授)が米国の観点から報告した。簑原氏は「覇権国の衰退には時間がかかるが、米国のパワーは確実に低下している」と主張した。米国のパワーの衰退を示す具体例として、「米国の一般市民が『あしたの』暮らしを気にするようになっている」ことと、「(南北戦争以来といえるほど深刻な)国内の分裂」の二つを挙げた。そして、トランプ大統領の掲げる「アメリカ・ファースト」は上述した二つの現象を反映したものであると指摘した。
その後、登壇者全員で中国の今後の動向や米国政治の行方、及び国際秩序における日本の役割について活発な議論が展開された。今回の京都安全保障セミナーには、大学生を中心に研究者や安全保障問題に関心を持つ一般の方など約120名が参加した。なおセミナーには、日米パートナーシッププログラム第5期生も数名参加し、関西における学術の中心である京都で研究者や学生と交流する貴重な機会となった。
日 時
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2019年10月5日(土)14:00 - 17:00(受付13時30から)
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時 程
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14:00 開会の挨拶
14:10~15:00【基調講演】
「米中対立と今後の国際秩序」
細谷 雄一(慶應義塾大学教授)
15:00~15:15【休憩】
15:15~16:55【パネルディスカッション】
≪モデレーター≫ 村田 晃嗣(同志社大学教授)
≪パネリスト≫
〇 浅野 亮(同志社大学教授) ≪コメンテーター≫ 西原 正(平和・安全保障研究所理事長) 質疑応答
16:55 閉会の挨拶
17:00 終 了
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会 場
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同志社大学今出川キャンパス
良心館1階 RY107教室
地下鉄烏丸線 今出川駅より 徒歩約1分 アクセス
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参 加 費
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無 料
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懇 親 会
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【会場】:アマーク・ド・パラディ 17:15~19:00
【会費】:4,000円
※事前にお申込みされた方のみ参加できます。会費は懇親会会場受付にてお支払いください。
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主 催
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同志社大学 法学部(第2回法学部講演会)
一般財団法人 平和・安全保障研究所
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助 成
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国際交流基金 日米センター(CGP)
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お問い合わせ
一般財団法人 平和・安全保障研究所
第1回京都安全保障セミナー担当
【TEL】03-3560-3293 (平日10:00~17:00) 【E-mail】rips-info@rips.or.jp