2011年 12月、野田政権は「防衛装備品などの海外移転に関する基準」について官房長官談話を発表し、事実上「武器輸出三原則の一部緩和」に踏み切った。この日本の安全保障に関わる一つの「決断」については、当研究所が 7月発刊した『アジアの安全保障 2012-2013』において、大阪大学大学院の久保田ゆかり客員准教授が、「武器輸出三原則の緩和-日本の防衛産業の現状と展望」として整理・分析している。
新大綱では「国際共同開発・生産への参加」を謳い、また、民主党は、「平和構築・人道目的限定の輸出を柱に武器輸出三原則の緩和を求める提言案」を出した。さらに、我が国の防衛当局は先般、英国との間で「防衛装備品等の共同研究・開発・生産に関する協力」の覚書を交わした。
こうした動きの要因の一つには国際貢献や人道支援の分野にあって厳しい戦場環境下、後を絶たない兵員の死傷者の続出が挙げられる。我が国もゴラン高原、南スーダン、ジブチ等各地に自衛隊員を派遣しているが、彼らの装備や施設・資材等は、彼らの命を守りきる高度な装備品等とは必ずしも言い切れず、また競争入札によって価格が安い代わりに質が一段落ちるものが選定される可能性も否定できない。
ましてや、主要装備品の購入費より維持費が大きい日本の防衛費の現状のなかで、防衛産業は優れた装備の研究開発や先行投資をやりたくても出来ない構造となっており、任務達成上、止むなく海外から優れ物を試験購入するといった緊急避難的な事態も生起している。こうした防衛産業を取り巻く機能不全は、企業の防衛産業からの撤退を招く一因となっている。このような事態が続けば、やがてドミノ的に撤退が拡大し、結果として我が国は、外国に装備を一部でも依存せざるを得ない事態となり、かえって高い装備を買わされる羽目になりかねない。
国際貢献や人道支援の分野で戦争・紛争の未然防止や隊員・兵士の防護・被害軽減のために、どのような装備等を「具体化」すべきか考え、下記のような一覧表を作ってみたが、情報・通信・警戒監視・防護・救急救命・輸送・補給等の各分野で、さらに力を入れるべき多くの装備品等があることに気がつく。国家は「決断」したのなら国産であれ、共同開発・生産であれ、目的達成のために「実行」しなければ結果責任を問われよう。
2012.08.02