日本の新しい「国家安全保障戦略」等について-分析と評価-
〇日本の新しい「国家安全保障戦略」等について-分析と評価-(PDF)
1.趣旨
日本政府は、 2022年12月16日、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」のいわゆる安保 3 文書を閣議決定した。「国家安全保障戦略」は、 2013年に策定されて以来初の改定となるものである。「国家防衛戦略」は、従来の「防衛計画の大綱」に代るものとして、今後の日本防衛の基本方針や防衛力の在り方について広く指針を示すもの となっている。また、「防衛力整備計画」は、従来の「中期防衛力整備計画」に代えて、向こうおおむね 10年後までを見据えた防衛力強化のための計画となっている。平和・安全保障研究所は、 2018年7月の政策提言「新たな安全保障戦略高まる脅威と不透明な国際環境に立ち向かう」に続き、2022年7月にも新たな政策提言「危機に抗して国家の総合力を発揮できる安全保障戦略-大国間競争の最前線における日本の選択-」を取りまとめて公表した。いずれも2013年の「国家安全保障戦略」の改定を提言したものである。
この度ようやく政府は「国家安全保障戦略」を全面的に改定するとともに、国の防衛体制の抜本的強化に乗り出したが、複雑で多岐にわたるその内容を理解することは必ずしも容易ではない。かと言って、上記の当研究所政策提言に照らして政府の決定の「成績表」をつくることが、必ずしも政府のとる政策の理解に資することにはなるとも考えられない。
そこで、当研究所としては、研究委員、2022年7月の政策提言に関与した提言委員及び当研究所研究員に今回の安保 3 文書についての簡潔なコメントを依頼し、政府の決定について様々な視点から分析・評価を行うこととした。本レポートは、12月25日までに寄せら れた有志計 1 9 名のコメントを 、便宜上、執筆者名の50音順に掲載したものである。
各論考はいずれも執筆者個人のものであり、当研究所としての見解を表すものではない。また、閣議決定から10日未満の短期間の間に執筆されたものであり、かつ、事前に認識の 一致を図ったわけでもないので、表記方法 など も含め あえて厳格に統一することはしなかった。できるだけ早く公開することを優先させたので、読者の皆様のご理解をいただきたい。
各執筆者が取り上げた論点は様々である。今回の政府の決定について総じて前向きな評 価が多かったが、そのような中でも幾つもの 重要な 課題が浮彫りになっている。 年末のお忙しい中、急なお願いにもかかわらず快くコメント 執筆を引き受けて下さったすべての皆様に深く感謝の意を表したい。研究所側で字数を限定したために十分に論旨を展開し切れなかった方々には申し訳ないが、簡潔なものにすることができた 分だけ明確なメッセージになったものと考える。このレポートが今後の日本の安全保障論議に貢献することを期待したい。
2022年12月26日
平和・安全保障研究所 理事長 德地秀士