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西原理事長執筆記事 PRESIDENT COLUMN

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キングス・カレッジとの共催シンポジウムから

 去る2月12日にキングス・カレッジで行った「日本、中国、米国:東アジアの将来を考える」と題したシンポジウムは、予想以上に多くの参加者があり、大成功であった。当研究所にとっては英国でこの種のシンポジウムを開催するのは初めてなので大いに気を遣って準備をしたが、その甲斐あってか多くの成果を得ることができた。当日の午前と午後は専門家による3つのテーマ(米中関係の現状、南シナ海と東シナ海における危機管理の展望、朝鮮半島の安定への展望)を中心にした議論をし、これらを基礎に、夕方70人の参加者が集まった公開シンポジウムを行った。感じたことをいくつか述べてみたい。

 第一に、参加者は日英以外に、米国、フランス、イタリア、フィリピンから計24名が集まり、専門家によるセミナー形式の討論となった。アジア、米、欧の3地域からの専門家の討議によって異なる視点が紹介された。このため、例えば米中関係に対する見方も米国、日本、フィリピンは当然厳しく中国を批判したが、ヨーロッパはやや和らい批判をするなどの相違があったのは興味深かった。

 第二に、参加者の多くがいまアジアで武力衝突があるとすれば、南シナ海であろうとの予測をした。実際に南シナ海では米中の艦船が武力衝突寸前になったケースを見るとうなづけるのであるが、台湾をめぐる米中の緊張の高まりを警戒する見方もあった。

 第三に、北朝鮮の非核化に関しては楽観的な見方をしたものはおらず、来る2月末のハノイで予定されている第2回米朝会談に関してもむしろ成果に対する懐疑的意見が多かった。また朝鮮半島における米国の影響力の低下を危惧する向きが強かった。さらに北朝鮮の非核化の失敗(核の継続保有)は日本の核武装化を正当化させる可能性も指摘された。

 第四に、尖閣諸島をめぐる日中対立に関して欧州側からも中国批判が出たのは興味深かった。こうした議論に接すると、東アジアの安全保障問題を欧州においても討論を行うことの意義があると感じた。

 当研究所はこれまでにヨーロッパで、ベルリン、ジュネーブ、それに今回のロンドンと、3か所でシンポジウムを共催してきたが、それぞれの会合が特異の雰囲気を与えてくれた。これらの経験を生かして今後のことを考えていきたい。

平和・安全保障研究所
理事長 西 原  正
(2019年2月18日)