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人材育成 PARTNERSHIP

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【報告】2022年度韓国研修活動報告

 

1. 研修の概要
 2023年3月下旬、日米パートナーシップ・プログラム第7期奨学生は韓国(ソウル)を訪問し、多くの研究者・有識者と意見交換を行った。今回の研修は、尹大統領の訪日後、日韓関係が再び動き始めた中での訪問となった。訪問先では主に、日韓関係、北朝鮮問題、韓国のインド太平洋戦略などについて意見交換を実施した。

2. 意見交換の概要
 以下では印象に残った意見交換の概要について所感を交えて紹介する。

(1) 日韓関係
尹大統領が訪日後のタイムリーなタイミングということもあり、多くのミーティングで話題に上がった。前政権の文政権は歴史問題に焦点を当てすぎていたが、現政権は日本を協力国と捉えているので、韓国国内での支持率を犠牲にしてでも徴用工問題の解決策を提示し、日韓関係を前に進める決断をした、との説明を受けた。尹政権の決断に対し、岸田首相の応答ないし呼応が十分でなく、「渋い、硬い、遅い」との評価もあった。日韓首脳会談でシャトル外交の再開が発表されたこともあり、日韓関係の専門家からは岸田首相は可能な限り早く訪韓するべきだとする意見も出た。尹政権は先に譲歩の姿勢を示したが、今後日本から何を譲歩してもらうのか、加えて尹政権は外交を重視し、国内政治にあまり注意を払っていないという見解もあった。

    

 

(2) 北朝鮮問題
我々が韓国滞在中も連日北朝鮮はミサイル発射を繰り返していた。北朝鮮の軍事問題専門家によると、これまでの発射実験を分析すると、北朝鮮はミサイルの種類や運搬手段も含め、既に十分な技術を持っていることが判明してきたとのことだった。北朝鮮が核兵器獲得に執着する理由として、アメリカなど諸外国との対話を求めているのではなく、北朝鮮自身の外交的自立性を担保したいが故との説明を受けた。さらに北朝鮮にとって、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立といった状況は、体制維持の観点からプラスになっていると言う解釈も訪問中複数聞かれた。今後の課題として、北朝鮮が核能力を手放すことは現実的ではなくなっているので、いかにして使わせないか、が重要になってきている。韓国にとって安全保障、外交を考える上で、隣接している北朝鮮の問題がいかに大きな比重を占めているかを訪問した先々で実感した。

(3) インド太平洋戦略
2022年12月に尹政権によって発表されたインド太平洋戦略についても、特に中国や台湾問題をどのように韓国が考えているのかについてほぼ全ての訪問先で言及があった。特に中国については、どのように戦略の中に位置付けるのか、未だに議論が続いている印象であり、日韓中の三カ国での協力、ないし対話の枠組を持つ可能性についても言及があった。台湾問題については、韓国にとっては在韓米軍が台湾有事に駆り出されると、対北朝鮮において脆弱になるとの懸念も聞かれた。
筆者の研究分野は米印関係だが、インドに関しては日本も同様、どの分野で協力するパートナーと位置付けるかについてはまだ方向性が定まっておらず、今後議論を深めていかなければならないという印象を持った。同時にこれまでインドとの間での二国間関係の歴史が浅い日韓両国にとっては米印関係の変遷について理解を深めることも、今後のインドとの関係性を考える上で参照点となる要素が多い可能性がある。そのような中で、インドとの協力という点で、日韓が協調して取り組める分野が今後出てくるかもしれないと希望も持った。
加えて、筆者の本プログラムの研究テーマであるアメリカのインド太平洋戦略との関連では、日韓両国がアメリカと協調しながらインド太平洋戦略の精緻化・実行を行なっていくことは重要であるが、同時にこれまでの「アジア太平洋」といった概念ではなく、なぜインドやインド洋まで地平を広げるのか、については単にアメリカに追随するだけでなく、日韓両国自らが考えていかなければならない課題であろう。

 

3. 感想と謝辞
 今回の研修を通じて、土山先生が研修前に仰っていた、「国際政治を理解するためには朝鮮半島情勢を理解することが重要」だということの意味の一端を理解することができたように思う。これまで研究生活を送る中で、私にとって朝鮮半島問題はどこか余所事であった。今回の研修を通じて、自分自身にとって「近くて遠い国」であった韓国や朝鮮半島の問題を理解することの重要性を認識したとともに、課題は多いが、日韓がともに協力できる、またすべき分野は決して少なくないと感じた。
 最後に今回の訪問先との調整を始め、我々奨学生にとって大変実りの多い研修のアレンジをしてくださった土山先生と神谷先生に厚く御礼申し上げたい。国際交流基金ソウルセンターにて我々奨学生と同世代の研究者との交流の機会を設けていただいた原田様、またきめ細やかな事前準備や現地でのロジをご担当いただいた大野研究員、秋元研究員にも感謝を申し上げる。