「防衛装備品の海外移転促進を」

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小野 純子(一般財団法人安全保障貿易情報センター副主任研究員)

 2017年11月24日、小野寺防衛大臣は、日本と英国が共同開発しているF-35搭載用の空対空ミサイルについて、2018年から新たなフェーズにはいること、すなわち、これまでの研究から一歩進み、試作品作りと性能評価の段階に入ることを発表した。この日英共同開発のミサイルには、日本製のシーカー(ミサイルの能力を決定する枢要な構成要素の一つ)の技術が使われているが、これは2014年に策定された防衛装備移転三原則及び運用指針に基づき、国家安全保障会議での審議を経て技術移転がなされた高度な軍事技術である。米国以外の国と初めて共同開発を行ったこのプロジェクトは、今後も日本が次世代兵器の国際共同開発に本格参入するためのマイルストーンになるであろう。

 歴史を遡ると、1980年代、複数の産業分野で日米間の貿易摩擦が起きていた頃、米国は、いわゆる「安保ただ乗り論」を展開し、片務的な日米同盟や武器輸出三原則によって制約のあった対米武器技術供与の在り方を激しく非難していた。特に、デタントからの脱却と力による平和を目指し、レーガノミクスと軍事支出の大幅な拡大をおこなったレーガン政権は、自国の武器開発において日本のデュアルユース技術(純粋な武器技術ではない)に注目し、同盟国としての双方向の技術供与を要求したのだった。しかし時代は大きく変わった。80年代のような「受け身」の技術供与に対応しているだけでは国際的なマーケットにおける信頼を得ることはできないし、突き詰めれば、日本の安全保障にとってもマイナス要素にも繋がる。

 改めて指摘するまでもなく、武器(特に最新鋭で大型のもの)の完成までには途方もないコストがかかっており、もはや一国だけで開発・製造する時代ではなくなっている。加えて兵器や装備品の国際共通化を図ることは、共同開発国間における連携強化や、補給及び管理の効率的な実施にもつながる。次なる新型兵器の開発が行われる際も、F-35やユーロファイター・タイフーン同様、各国が資源と知識を結集して共同開発をおこなっていくことは間違いない。だからこそ、高度な軍事技術(デュアルユース技術を含む)を保有している日本が、防衛装備移転三原則の策定と防衛装備庁の新設を行ったことは、国際社会で歓迎されたし、その後も共同開発で着実に実績を積んでいることは、日本の国益にも叶うものなのである。また、見方を変えれば、高度で機微な技術は国際的な市場価値も高いため、それらを保有していることは、外交上のバーゲニングチップをもっているということでもある。要すれば、これからの日本は、安全保障と国防の要諦の一つとして、武器の輸出を促進し、兵器の国際共同開発にも積極的に参画していかなければならないのだ。

 核を持たず、安全保障を米国に依存している日本が、この先も日米同盟を強固に維持し、かつ他の準同盟国とも対等な関係を続けていくためにも、日本がもっている軍事技術や装備品の輸出をさらに促進し、かつ共同開発等において日本のプレゼンスを示すことは、非常に重要な安全保障上の政策である。我々国民サイドも、武器輸出が日本の安全保障にとって重要な要素であることを十分に認識し、防衛政策の在り方を考えていかねばならない時期にきている。

 冒頭で述べた、日本企業の持つ高度な技術を使用した日英共同開発は好例である。こうした事例を重ねるためにも、まずは現行の複雑(でありながら、一部未整備)な武器輸出に関する法体系(外国為替及び外国貿易法とその下位の政省令や通達等)の見直しは早急に行われねばならない。2018年は、武器輸出に関する法整備を基本とし、トランプ大統領が要求している米国からの武器購入を一定程度は行いつつも、同時に国内の防衛産業の育成と技術力の向上、及び日本製武器(と技術)の輸出促進がバランスよく行われることを期待する一年としたい。

RIPS' Eye No.223

執筆者略歴

おの・すみこ 一般財団法人安全保障貿易情報センター 副主任研究員。神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程中途退学。専門は、日米の輸出管理政策、安全保障貿易管理、武器輸出等。近著に『米国輸出管理法と再輸出規制実務』(CISTEC、2017年)など。RIPS日米パートナーシップ・プログラム第3期生(通算第17期)。

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