北朝鮮非核化に交渉と圧力の強化を

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金田 秀明(NPO法人 岡崎研究所 理事)

 2月7日午前、北朝鮮は累次の国連決議に違反し、国際社会からの強い反対を無視する形で、人工衛星打ち上げと称し、同国西北部の東倉里発射場で弾道ミサイル発射試験を強行した。前回2012年12月の発射試験の後、同発射場では発射台の拡大など機能拡張工事が行われ、また1月6日には水爆実験と称する小規模の核実験を行ったことから、新たな発射試験は間近いと目されていた。果たして2月2日には発射予告が国際機関に通知され、一度更新された予告日の第1日目に発射が行われた。結果として何らかの物体を地球周回軌道に乗せることには成功した模様である。しかし真の目的は、そこにはない。

 こうした動きを続ける北朝鮮の究極的な狙いは、米本土全域を脅かす長距離弾道ミサイルの実戦配備である。そのための技術的課題を、発射試験を重ねて段階的に克服しつつあると思われる。残るは、車載型KN-08級弾道ミサイルの即応化や長射程化、大量破壊兵器(核、生物、化学兵器)弾頭の開発、再突入・対目標誘導技術の獲得、指揮統制システムの信頼性向上といった面での実証が必要となってくる。
これらを考えれば、北朝鮮が今後も「核実験」や人工衛星打上げと称する「多目的弾道ミサイル性能向上試験」を企図することは明白である。国内で出来ない試験は、国際社会の監視の目を掻い潜り、イランやパキスタンといった国で肩代わりすることも考えられる。

 北朝鮮のこういった動きは、何としても制止しなければならない。米本土に届く核弾道ミサイルは、日本にとって他人事ではなく、米国の対日拡大核抑止に重大な負の影響を与える。日本を対象として200発以上が実戦配備にあるノドンの命中精度が向上し、大量破壊兵器が搭載される可能性を考えれば、もはや対岸の火事視できる話ではない。しかし国連安保理や6者協議当事国である中国やロシアを含む国際社会の動きは鈍い。北朝鮮に対しては「交渉か圧力か」という二者択一ではなく、両側面でもう一歩踏み出す必要がある。

 「交渉」の面では、実効性に乏しい6者協議に過度に期待を置かず、新たに直接的な当事者である米中韓朝の4か国による「韓半島非核化協議」を緊急に始めるよう働きかけるべきである。中国が、如何に韓半島の非核化に関して責任ある態度を取るかが、今後のポイントとなり、そのためには米国の関与が必須となるからである。拉致問題を抱える日本は、敢えて長期化が見込まれる協議の直接の当事者とはならず、しかし米韓を積極的に支援する立場で、日米韓3か国の緊密な協議を欠かさず、4か国協議に実質的に関与する。一方、拉致問題についは、収束に向けての日朝2国間合意の再興を最重視するとともに、国連人権理事会での金第一書記に対する「人道に対する罪」での訴追や、米議会の米国人拉致解明決議案の早期議決に向けた動きに同調して、米韓や国際社会を巻き込んだ形で解決を図って行くことが得策と考える。

 「圧力」の面では、日米韓が中国を巻き込み、かってないほど強硬な国連安保理制裁決議採択を実現したことは評価できる。今後日本は、拉致問題を含めた北朝鮮の対応振りを注視しつつ、国連決議よりも強硬な独自の制裁措置を適確に執行する一方、関係国に対し、制裁決議に沿った実効性ある行動をとるよう働きかけを強めていくことが必要となる。また日本にとって何よりも重要なことは、北朝鮮の弾道ミサイル発射機能制圧能力の保有を含む弾道ミサイル防衛(BMD)体制を強化する一方、韓国のTHAAD導入の動きに同調させ、日韓GSOMIA協定の締結に向けた協議を加速させ、地域BMD体制の強化に向けた努力を進めることである。また北朝鮮のみならず、中国の核戦力の増強、近代化に対応し、「拡大核抑止体制」の脆弱化を防ぐための具体的方策を得るための日米協議も加速させる必要がある。

RIPS' Eye No.204

執筆者略歴

かねだ・ひであき 昭和43年防衛大学校卒、海上自衛隊に入隊、海幕防衛課長、統幕第5幕僚室長(政策担当)、護衛艦隊司令官など歴任。平成11年退官(海将)後、ハーバード大学上席特別研究員、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授など歴任。現在、NPO法人岡崎研究所及び平和・安全保障問題研究所理事など兼任。

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