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第4期生(通算第18期)「活動報告」

2016年度 陸上自衛隊「総合火力演習」 見学研修

2016年度 韓国研修

(肩書はレポート執筆当時のものです)

【報告】 2016年度 陸上自衛隊「総合火力演習」 見学研修(木場 紗綾)

木場 紗綾 (同志社大学 政策学部 助教)

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 2016年8月27日(土)、日米パートナーシップ・プログラム第4期生は陸上自衛隊の東富士演習場において、「平成28年度富士総合火力演習」を見学した。見学に先立ち、平和・安全保障研究所の武田正徳事務局長より、演習の基礎知識に関するブリーフィングを受けた。武田事務局長は陸上自衛隊を退役された陸将で、少年工科学校長や高射学校長、第1師団長も務められた専門家である。防衛装備品の素人が混同しやすい「戦車「と「自走砲など」に関する説明は、演習を見学するにあたっての事前知識として有益であった。装甲戦闘車、自走りゅう弾砲、自走高射機関砲などの写真を提示され、「このなかで戦車はどれか」と尋ねられて、正しく回答できる市民がどれだけいるだろうか。緑色でキャタピラーがついていても「戦車」ではない、諸外国の反乱弾圧やクーデターの際に街中に出てくる車体が「戦車」とは限らないので安易に戦車と呼ばないように、など、素人には耳の痛い注意もいただき、演習に臨んだ。

DSC_0874.JPG 演習は前半と後半に分かれており、前半では、遠距離火力、中距離火力、近距離火力、ヘリコプター火力、対空火力、戦車火力が紹介されたあとに第1空挺団による空挺降が披露された。各装備品の特徴や運用方法、目標地点などについては、わかりやすいアナウンスと時にはスクリーンを使っての詳細な説明があるので、この分野にあまり馴染みのない市民にも非常にわかりやすい構成となっている。

 演習の模様は毎年、動画で配信されているが、空気を震わせる発砲音、戦車砲のすさまじさ、対戦車ヘリコプターAH-1S(コブラ)や戦闘ヘリコプターAH-64D(アパッチ)から降り注ぐ弾丸の威力などは、生で見ないと感じることができない。どこから撃っているのかわからないほどの場所から放たれる遠距離、中距離火力の迫力と正確さには、ただただ、その高度な装備とテクニックに感嘆するばかりであったし、徹甲弾と対戦車りゅう弾という2種類の砲弾を走りながら発射する90式(きゅうまるしき)戦車、蛇行射撃(蛇行しながら撃つ)と背面更新射撃(後進しながら撃つ)を続け、撃つとすぐに猛スピードで後退し、急停止して向きを変える有名な10式戦車(ひとまるしき)戦車も、間近で見るとその機動力の高さが実感できた。外界への視界が非常に悪いなか、このような機敏な動きをするには非常に高度な人間の技能が要求されるのであろう。

 後半では、日本の島嶼部が攻撃を受けた際の対応として、陸・海・空の各部隊がどのように「部隊配置」「機動展開」「奪回」を実施するかの作戦様相が展開された。ここでも、「統合運用」の重要性やシナリオがスクリーンを使って丁寧に説明されるため、どのような装備品を使ってどのような作戦が展開されているのかが初心者にもよくわかる構成となっている。クライマックスは戦火拡張のために「戦車教導隊(富士教導団隷下の機甲科教導隊)、前へ!」の命令とともに、8台の戦車が並んで一斉に発煙弾を撃ち、それが花火のように見える有名なフィナーレで終了する。
本演習は毎年8月に開催され、陸上自衛隊の火力を主要装備ごとに間近で見られるとあって、一般市民にも人気が高い。一般公開部分の観覧券の抽選倍率は、今年は28倍に上ったという。演習の第一目的は富士学校の学生に対する訓練・教育であるが、広報効果も重視されており、ナレーションやスクリーン説明はさすがによく工夫されている。自衛官による会場内外の誘導、きれいなトイレの設置などからも、日頃あまり見ることのできない自衛隊の一面を垣間見ることができる。装備品の威力や「軍事好き」の人々だけでなく、広く一般市民や自衛隊に関心をもつ外国人にもこの大規模な演習を見学する機会が開かれればと思った。

 最後にこの場をお借りして、このような貴重な機会を与えてくださった平和・安全保障研究所および国際交流基金日米センターに心からの御礼を申し上げたい。

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【報告】 2016年度 韓国研修(長久 明日香)

長久 明日香(京都大学大学院法学研究科 研修員)

1.研修の概要
 2016年9月5日から8日にかけて4日間の日程で、日米パートナーシップ・プログラム第4期(「安全保障研究奨学プログラム」からは通算第18期)奨学生は、韓国研修としてソウル市内にある5箇所の研究所・大学の安全保障問題専門家を直接訪問し、意見交換を行った。議論の内容は、単に今日の韓国情勢に止まらず、日米、日韓、米韓、韓中関係を含む国際政治、外交問題にまで及んだ。このような議論によって、東アジアにおいて共通の緊張や圧力のもとにありながら、必ずしも十分な協力が進んでいない日韓関係の諸問題についての理解が深まった。そして、日韓関係について議論することは、両国にとって重要な同盟国である米国との関係を考える上でも重要であり、日米パートナーシップ・プログラムのテーマである日米同盟の視点を入れたアジアにおける安全保障問題の研究を進める上で不可欠と言える。また、こうした経験は、日本国内での活動や米国訪問だけでは得難いものであり、同時に、同分野の専門家との人的交流を深め、今後の国際的な研究活動の拡大に寄与するものであったと言える。さらに、会合の合間に、日本大使館前での慰安婦像周辺での水曜デモを見学し、DMZ(非武装地帯)や第三トンネル(北朝鮮が南侵用に秘密裡に掘ったトンネル)を目の当たりにしたことは、韓国民が抱えている問題の切実さを理解するのに役立つものであった。
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2.議論の概要
 今回の訪問では、事前に、南北統一問題、北朝鮮情勢についての理解、日韓の安全保障面での協力の可能性、慰安婦問題等を主なトピックとして挙げ、相手側からの簡単なブリーフィングを受けた後に、質疑応答形式で議論を行った。しかし、実際の議論では、事前の想定を超えた多様な問題について、活発な意見交換が行われた。

 まず、政策上の観点から、韓国が米国THAADの国内配備を決定したこと、さらには、それに伴って中韓関係が悪化していること等についても率直な意見が聞かれたことが印象的であった。一方、現実の政策としてTHAAD配備を求める一方で、そもそもミサイル防衛システムに対する不信が存在することも、各発言者との議論の行間から読み取れたように思う。また、昨今の東アジアの不安定化に伴い、現在再び締結に向けての努力が求められているGSOMIA(軍事情報包括保護協定)についても、韓国の研究者と意見交換が出来たことは有益であった。また、日韓両国にとって重要な同盟国である米国についてもいくつかの議論があった。とりわけ、近年の米国に対して日韓両国が共通して持つ懸念は、やはり駐留米軍の撤退をも示唆するような米国内の新保守主義の台頭であろう。しかし、韓国側からはそうした新孤立主義が台頭しても、米韓同盟は揺るがないだろうというような楽観的な意見も見られ、必ずしも新孤立主義に対する懸念が韓国中で共有されているわけではないようだった。

さらに、議論は以上のような日韓、米韓等のバイラテラルな問題だけでなく、日米韓のトライラテラルな安保協力を阻害する要因についても深い議論がなされたように思う。一般には、日韓協力がうまく進まないことが日米韓協力の阻害要因であり、背景には日韓の歴史問題があると指摘される。今回の訪問でも、議論が歴史問題に及ぶと会議室の空気が一変することもあり、問題の複雑さが伺われた。しかし、その一方で、日韓協力がうまく進まない重要な要素の一つに中国の存在(あるいは中国への配慮)があり、日韓関係だけではなく、日中韓というもう一つのトライラテラルな関係が複雑に絡んでいることも示唆されていた。韓国にとって、中国は歴史的に深いつながりがあるだけでなく、今日では経済的な関係も極めて緊密である。さらに、中国は今後の南北統一の進展にとっても重要な存在であるため、中韓関係は日中関係とはまた異なる意味で難しい問題を抱えているように感じられた。

 最後に、特に南北統一に関する議論については、韓国において様々な研究機関を直接訪問し、議論を重ねたことで、非常に多様な角度から考察すべき問題であることが深く実感できた。まず、そもそも統一がどのようになされるのかという点からして多くの論点が存在する。例えば、平和的に統一されるのか(韓国側の見通しとして多かった)、北朝鮮の崩壊のようなより混乱した状況を経るのか、それとも直接的な武力衝突を伴う形になるのか、その可能性は現在のところ未知数である。さらに、このような統一過程だけではなく、どのような形で統一するのか、ということも重要であろう。今回の意見交換では、法的な統一だけでなく、事実上の統一という形もあるのではないか、という意見も聞かれた。つまり、必ずしも法的な意味で完全な統一国家を求めるのではなく、まずは終戦状態に持ち込むことから始め、その後、互いに認め合えるような事実上の統一の形を模索するという方法もあり得るのではないだろうか。

 さらに、南北統一が日本に与える影響についても議論が及んだが、それは「日本にとっては南北が分断されたままの方が有益なのかそれとも統一された方がよいのか」という率直な疑問として捉えることが出来る。南北統一の影響は、先に見た統一過程や統一の形次第で、いかようにも変わると言えるが、日本にとってどのシナリオが最善なのか、より戦略的な視点が必要であろう。また、南北統一が日本だけでなく世界に対してどのようなインパクトを与えるのかについても更なる考察が必要である。例えば、北朝鮮に核が存在したまま南北が統一することの問題、あるいは統一後の朝鮮半島が、中国寄りになるのか、米国寄りになるのか、ということは今後も重大な争点であり続けるであろう。これらの点は、日本だけでなく、国際政治全体の争点であり、今後も南北関係には十分注視する必要があることを痛感させられた。
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3.感想・謝辞
韓国から東アジアの国際政治、外交・安全保障問題を見ると、日本で考えられているものとは異なる視点が多くあり、また韓国国内においても安全保障政策の柱として米韓同盟を重視する立場から、経済や歴史を重くみて中国との提携を重視する立場まで多種多様であり、必ずしも外交・安全保障政策に対する見方は一枚岩ではなく、ある意味で分裂していることがよく分かった。このことは訪問した研究所や大学の研究者の立場にも現れていた。また、今回の訪問では、外交・安全保障問題だけでなく、歴史、経済、国内政治(米韓の大統領選挙)などについて、韓国の研究者と広範囲に議論できたことは有益であった。また、偶然ではあるが、研修期間がG20に始まりASEANサミットまでの期間と重なっていたことや、北朝鮮が研修初日の5日にミサイル3発を日本海に向けて発射し、研修最終日の翌日には核実験を行なう等、現実に日韓の外交・安全保障に関わる問題が続発した。このため、訪問先で行った米韓関係、日韓関係、ミサイル防衛、中国の影響力についての議論が極めてリアリティをもっていた。さらに、議論の中で言外に現れる韓国側の本音の部分は、実際に訪問し直接議論しなければ捉えられないものであり、隣国として今後さらなる協力が必要とされる韓国について表面的ではない部分での理解が深められたことは、本研修の最大の成果であったと思う。

 今回、韓国研修でこのように実りある貴重な体験が出来たのは、国際交流基金日米センター(CGP)の御後援と平和・安全保障研究所(RIPS)の西原正理事長による御支援、さらにプログラム・ディレクターの土山實男先生、神谷万丈先生の御指導の賜物であり、末尾ではあるが、深く御礼申し上げたい。また、本研修全体のアレンジから現地での対応を含め、様々な場面でご尽力いただいた安富研究員にも奨学生一同、深く感謝申し上げる。
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