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第7回 RIPS 公開セミナー2009「日米同盟の更なる強化へ向けて」

第1日目:「新内閣と日米同盟の行方

日  時
2009年9月10日
講  演
村田 晃嗣 氏(同志社大学 教授)

第2日目:「新防衛計画の大綱と日米同盟

日  時
2009年9月17日
講  演
齋藤 隆 氏(前 防衛省統合幕僚監部 統合幕僚長)

第3日目:「米軍再編と日米同盟

日  時
2009年10月1日
パネリスト
中谷 元 氏(元 防衛庁 長官)
長島 昭久 氏(防衛大臣 政務官)
レイモンド・グリーン 氏(在沖縄米国総領事)

第4日目:シンポジウム「防衛産業と日米同盟」

日  時
2009年10月8日
パネリスト
西山 淳一 氏(三菱重工業 航空宇宙事業本部 顧問)
増田 義一 氏(防衛省 経理装備局 装備政策課長)
ジェフリー・ブルーム 氏(米国国防副長官室 / ジャパンデスク)
及川 耕造 氏(経済産業研究所 理事長)

(肩書は講演当時のもの)

第1日目:「新内閣と日米同盟の行方」

日  時
2009年9月10日
講  演
村田 晃嗣 氏(同志社大学 教授)

 第1回は9月10日(木)、都内で「新内閣と日米同盟の行方」というテーマで同志社大学教授であり当研究所主催の「安全保障研究奨学プログラム」第4期生でもある村田晃嗣先生にご講演頂いた。以下は講演の要旨である。

衆議院選挙の結果と今後の政局

 今回の総選挙が民主党の大勝と言うよりは自民党の大敗と言う方が的を得ており、小選挙区制度の特徴が大きく現れた選挙であった。自民党と比較しやすい例としてイギリスの保守党があるが、イギリスの保守党と異なって、自民党には党をまとめるイデオロギーがない。これまで自民党をまとめてきたのは「政権与党である」といったことである。イギリスの保守党が野党に転落しても13年間結束を維持していることに比して、自民党の今後の結束には多少の疑問符がつく。

 日本人はまだ政権交代に慣れておらず、スムースに旧政権から新政権に移行するシステムが確立されていない。現状では政権移行期において政府の外交的活動が著しく鈍る。例えば国際会議には現職の大臣に加えて野党の「影の大臣」をオブザーバとして送るなど、この点を補う仕組みが必要である。

 今後、日本の政治の行方を占う上で、やはり重要なのは来年の参議院選挙である。そしてその際のパターンの一つ目は、民主党が過半数を取る場合である。この際は民主党の安定政権となり、民主党と基本路線に大きな差異がある社民党との連立が維持されることは考えにくい。二つ目のパターンは参議院選挙で自民党が勝利する場合である。世論調査からも国民は自民党の再生に期待しており、バランス指向が伺える。仮に自民党が参議院で第一党になれば自民党は解散を要求し、ねじれ国会のもとで多くの法案が成立しない状況が生まれると思われる。民主党が自民党に大連立を持ちかければ自民党の若手は受け入れる可能性が高い。しかし、これは民意への裏切りと受け取られ民主党の支持の低下につながる。三つ目は民主党が単独過半数をとれずに公明党と連立する場合である。自民党との連立が自動的に解消された公明党はイデオロギー政党ではなく、民主党との連立をスムースに受け入れるだろう。四つ目は社民党と国民新党との連立が継続する場合である。社民党としては野党なった場合、自民党と協力することは不可能であるため、孤立無援の野党となる道を選択するか、政権の一角に入って少しでも次の参議院選挙で議席を伸すしかない。よって、民主党の側につくほかない。

 今回の総選挙では自民党は与党として戦ったにもかかわらず、大苦戦をした。次回の衆議院選挙は野党として戦うので、団体や後援会が支えにならず、強固な個人後援会と地盤のない議員は政党助成金が頼みである。よって現状の自民党は助成金を受け取るためには結束して議席を維持するしかなく、弱いが故の結束が維持されるだろう。

民主党政権への懸念材料

 民主党政権の特徴として「国家戦略局」の設置が挙げられた。日本政府の機関で「戦略」という名称が使われたのは初めてであるが、しかし担当大臣と内閣官房長官、官僚、与党との関係がはっきりせず、また安全保障会議との関わりも不明である。そもそも「戦略」や「総合」という言葉が安易に使われるときに限って、戦略や総合的な観点が欠如しているという心理的不安を反映しているのである。新政権は意思決定のメカニズムや過程を無駄に複雑化させる可能性がある。

 岡田新外務大臣の「核の先制不使用」も不安要素である。現在、日本はアメリカの拡大抑止に依存しており、これは仮に北朝鮮から東京が核攻撃をされた場合でも、アメリカの報復的核攻撃はその後に限るということである。これでは日本にとっては安全保障上の意味がない。さらにもし、北朝鮮のミサイル弾頭に生物化学兵器が搭載されていた場合はアメリカの核は使用されないということを意味しており、抑止力を失することになる。

 鳩山氏署名の論文がアメリカの電子新聞に掲載された件については、内容的にはそれほど取るに足らない、他愛のないものである。しかしこの論文が現在引き起こしている否定的な反応について事前に十分に注意が至らなかったという外交センスにこそ問題がある。この外交能力の問題はより大きな外交案件で吹き出す可能性がある。

 新政権に対するアメリカの態度についても問題点がある。国務省が普天間基地の移転問題について「民主党政権となっても再交渉しない」と言っていることについては、民主党を頑なにさせる「攻撃的」な態度であり、民主党が政権につく以前には「する必要のない発言」であった。特に何も言わずプレスに尋ねられたら「ノーコメント」としておけば良かった。

 民主党は自民党などから「外交安全保障政策に関する準備がない」と批判されているが、これはある意味仕方のないことである。要は4年間のスパンでよりよい外交をすることが重要である。しかし、もっとも民主党がしてはいけないことは「準備がないのにあるようにみせる」ことである。

 特に鳩山政権最初の日米首脳会談では総論として「日米同盟が両国、東アジア地域、国際社会にとって重要である」と言うべきで、これ以外の個別政策(核関連の密約、インド洋での協力、アフガニスタン協力、普天間基地など)について追及や約束をすることは避けるべきである。日米関係が両国および地域、グローバルに重要であると同意し、信頼関係を印象づけることに集中すべきである。大枠のみを決定し個別政策は後に回す必要がある。実際に細川政権は「Noといえる日本」を見せようとし失敗した。この態度は一見毅然としているが、弱さの現われである。

民主党政権の光明

 しかし、反面、民主党についてそれほど悲観的な見通しばかりではない。インド洋での給油活動、アフガニスタン問題があるが民主党にはいくつか選択肢がある。これらを全てやらない選択肢はリスクを伴う。

 インド洋での協力をやめてアフガニスタンで協力を行う選択肢があるが、アフガニスタンに陸上自衛隊を送ることは戦死者が発生するリスクを伴う。これが航空自衛隊に代わっても戦死者が出る可能性は否定できない。代わりに財政支援を行うにしても途方もない金額をこの不況の中で用意しなければならない。

 インド洋での協力は金銭的負担もあるが、安全で安上がりである意味「高く売れる」政策と言える。自民党がやるより民主党がやる方が同じ協力でも、米に感謝される度合いが違う。沖縄基地問題(普天間の辺野古沖移転)についてかつてペンタゴンは「政府間合意は1ミリも動かせない」とした態度をとっていたが、最近は米が譲歩する姿勢に変化し、数メートルなら容認するとしている。さらに民主党が日米同盟の強化を進めようと主張すれば自民党はノーとは言えない。政権交代を期に日米同盟を強化することができる。また地位協定の改訂は日米とも実務当局が避けたがる問題だが、思いやり予算と同じく二者択一の問題ではない。「検討」や「見直し」ということは可能だ。その反面インド洋・アフガニスタン協力や沖縄基地問題はイエスかノーで答えなければならない問題である。

日米安保のさらなる強化とは...

 2010年は日米安全保障条約改定50周年であるが、この50周年を祝福して迎えることができるのかそれとも満身創痍の日米同盟として迎えるのかが注目される。来年はアメリカの中間選挙、日本の参議院選挙があるため両国とも内向きになっていることが予想される。さらに2010年は日韓併合100年目を迎える。歴史問題に加えて、北朝鮮の核問題、中国の台頭などを考慮するとき今ほど日韓関係が重要な時期はない。経済面で見ても、日本のGDPが中国に抜かれることは確実である。しかしこれは、日本の失敗というわけではなく世界史的な流れである。全世界に工業化が行き渡ったため、工業化の度合いが国家の行方を決する時代が終わり、再び面積の広さや資源の多さが重要になる時代が来るだろう。日本がGDP世界第2位の座を失うことをどれだけ冷静に受け入れられるかが重要になってくる。

質疑応答

Q:民主党に政策ブレーンはいるのだろうか?もしいるのであれば国家戦略局などとの関係はどうなると思われるか?
 それほど豊富なブレーンを有しているとは思えない。小沢氏は「政府と党は別」としているが国家戦略局については党との関係が見えにくくなっている。民主党、自民党ともそれぞれ安全保障専門家を育てるべきで、政権交代とともにスウィッチできるブレーンを備え、国家の政策としてぶれない範囲で国民が選択できるような体制が必要である。アメリカの民主党と共和党の例が一つのモデルである。

Q:鳩山次期総理が「友愛」という言葉を頻繁に使うことについて、友愛の中身についてどう解釈するか?
 率直に言えば不明確であるが、キャッチフレーズを持っていた首相は過去を見ても少なく、メッセージ性の無い首相より持っている首相の方が良いのではないだろうか。日本には国際政治を見る安定した視座がなく、軍事力を重視する人は軍事だけに論が偏り、過度にリベラルな人は軍事を無視したような議論をする。経済だけに偏った議論も見受けられる。軍事力に加え、国に対するイメージや概念、印象なども重要である。また経済や富も同じく重要である。やはり総合的にこれらをリンケージさせて論ずるべきである。鳩山氏の「友愛」外交もその第一歩として考えたい。

Q:鳩山次期首相が世襲議員であることについてはどう評価するか?
 鳩山次期首相は4代目の政治家で、ここまで続くのはなかなか先進民主主義国では珍しいが、総理が世襲議員のパターンはこれが最後ではないだろうか。しかし、リーダーは降ってくるものではなくフォロワーが育てるものである。世襲それ自体が駄目なのではないが、今の日本には新しい人材をリクルートする機能が硬直化しているのではないか。

Q:シンクタンクの役割、政党との関係は?
 日本のシンクタンクが育たない理由が二つある。一つは需要がないからで、たとえ供給しても受け手にシンクタンクを使いこなす意図や能力が無ければ成立しない。二つめは日本の「寄付力」の無さである。アメリカ人家庭の年間平均寄付額は16万円なのに対し、日本の場合は3千円であり、市民力の弱さがうかがえる。これは民主党政権の課題でもある。

Q:同盟には共通の脅威が必要なのではないかと考えているが、日米同盟を支える構造的条件は何であると考えるか。
 日米同盟を狭く、危機対抗型ととらえるなら余命は長くないと言える。北朝鮮の体制は長く続かないだろうから、北朝鮮の脅威は長期的な課題ではないと考えている。中長期的な同盟の課題として中国をグローバルな責任ある国にしてゆくための働きかけの機能を有することが重要である。その際最後のより所となるのは我々が戦後営々として築いてきた市民社会のネットワークではないだろうか。これは中国がとうてい真似できないものである

第2日目:「新防衛計画の大綱と日米同盟」

日  時
2009年9月17日(木)
講  演
齋藤 隆 氏(前 防衛省 統合幕僚監部 統合幕僚長)

 第2回は9月17日(木)、都内で「新防衛計画の大綱と日米同盟」というテーマで齋藤隆氏にご講演頂いた。以下は講演の要旨である。

防衛大綱の歴史

 8月に政府の「安全保障と防衛力に関する懇談会(以下:安防懇)」の答申書が発表された。総じて高く評価できる。個別の論点については本公演でも触れるが、まずは、過去日本の防衛政策の基本となってきた「防衛計画の大綱」を振り返りたい。

 防衛計画の大綱は第1次から第4次までの防衛力整備計画を背景としている。第3次防衛力整備計画までは比較的順調に推移したが4次防はオイルショックの影響などもあり途中で頓挫した。さらに経済成長の鈍化もあり、1976年に4次防までの考え方を見直し初の防衛計画の大綱が策定され、ここに「基盤的防衛力」という考えが誕生した。

 この基盤的防衛力とは我が国自らが「力の空白」になって地域の不安定要因にならないという考えに立っている。その後時代の経過とともに「不磨の大典」と化し、防衛力整備の推進に役立った面と硬直化を招いたという両者の側面をもつ。

 さて1995年に冷戦の終結を背景に防衛計画の大綱が見直された。その後、阪神大震災や、オウム真理教によるテロ事件なども発生、期待される防衛力の質的変化が加速される。さらに2004年の16大綱策定以降、国際平和協力業務が法的に余技の位置づけから本来任務化された、この意味するところを防衛力整備の観点からみると国際平和協力業務に関しても適正な防衛力の資源配分をすべきであることを意味し、この部分をも基盤的防衛力の概念に含めるのは無理があると思う。今回が防衛計画の大綱の三度目の見直しに当たるが、この国際平和協力業務と基盤的防衛力の関係をどの様に整理するかも課題と認識。

国際安全保障環境のとらえ方

 今後の安全保障環境を考えると、一国では安全保障の問題は解決できなくなってきているという認識が重要。特に大量破壊兵器)拡散の問題や海賊、麻薬、国際テロの問題に効果的に対処するには各国の協調が重要である。同時に日本周辺に目を転じれば、中国の軍拡、北朝鮮の核開発など従来型の国家的脅威にも国際間の協調が必要。

 安全保障問題は、これまで事態を中心に考えられてきたと考えている。今後はさらに時間軸、空間軸を加えて考えるべきである。

 まず、事態軸として、「国家を対象とした正規戦」「テロ、ゲリラ等非国家を対象とした非正規戦」「大規模災害」「国際平和協力活動」の4象限への広がりが考えられるが、今後はこれらの四象限にわたって防衛力は有効に対応していく必要がある。

 次に空間軸として地理的空間、宇宙空間、サイバー空間について認識する必要がある。地理的空間にあっては、気候変動やそれ等による北極海の航路の開拓など新たな課題が浮上しつつある。宇宙空間については従来、通信、偵察衛星などの運用論、技術論が中心であった。今後はこれにBMDの問題が加わる。この問題は弾道ミサイルからの国土防衛という限定的な問題に留まらず、より宇宙規模での戦略的な考察が必要になってくるであろう。最後にサイバー空間について、地理的に規定された国家とは別のサイバー空間上に新たな枠組みが生まれる可能性をも考慮する必要がある。また近々の課題としてサイバー防御への人材(サイバー戦士)育成には国としての対応が急がれる。

 最後に時間軸である。従来の安全保障では、平時と有事を区分し有事になったときにいかに効果的に対処するかと考える傾向にあった。しかし今後の安全保障環境はこれを許さない。平時から多種多様なカードを駆使しながら、むしろ「平事を有事に発展させない努力」が必要である。それにはもちろん外交、防衛力が一体となって対応する必要がある。安防懇の答申には「多層協力的安全保障戦略」「運用による抑止」と述べられているが、画期的であると評価できる。

日米同盟と日本の安全保障

 同盟には過去にも日英同盟そして4カ国同盟という歴史もあるが、強調しておきたいのは、二国間同盟と多国間同盟を択一的に捉えるべきではない。そして今後日米同盟と国連は両者とも重要でありこれを二者択一的に考えるべきでないと考える。また成熟(対等)した日米同盟のためには集団的自衛権の問題は避けて通れない。ただし集団的自衛権の問題もこの問題のみで論ずるべきではなし。集団的自衛権の行使を容認するか否かの単純な二元論ではなく他の安全保障政策との、パッケージとして考えていくべきである。

防衛力の整備と柔軟な部隊運用

 安防懇は「運用による抑止」という概念を提示している。前述したように有事はもとより、有事にならないように事態がエスカレートすることを抑止、抑制することが重要である。そのために、政治の要請に基づき外交と一体となり「あく球」「くせ球」に対応するため、防衛力の「多機能性」と「柔軟性」が求められている。

 例えば、これからは定食だけしか提供できないレストランでは多様なお客のニーズには答えていけない。

  • どんな料理にも対応できる料理人(柔軟な司令部機能)の重要性。
  • 新鮮で豊富な種類の食材(練度の高い多様な部隊)がなければどんなに腕の良い料理人がいても美味しい料理はできない。
  • 出来た料理を即配(機動力)できなくてはならない。冷めた料理は美味しくない。

 さらにこのような「運用による抑止」の実効性を高めるためには、

  1. 政治の強いコントロールの必要性。
  2. 法制についてもその都度法制を整備するというやり方では対応が遅れる。恒久法の整備の必要性。
  3. 関係機関との連携について。例えば海上自衛隊と海上保安庁の間でソマリア沖での司法警察活動をどう分担するか、海上自衛隊にその権限を与えるという議論もあったが、海上保安官にそれを任せたうえで、連携を強化する方向を模索した。「餅屋は餅屋」という考えに基づき関係機関との連携についても一層強化すべきであるのは論をまたない。
  4. 日米間の連携についても平時からの緊密な情報交換が必要であり、そのためには秘密保護法の整備なども必要となる

おわりに

 終わりに今後の大綱を考えるに際しての問題点を述べる。

  1. 「守りのみをもって戦いに勝利する」という教条的な専守防衛から脱却すべきである。専守防衛という基本的な精神までも否定するものではないが、あまりに教条的な概念が一人歩きしていることには注意すべき。
  2. 基盤的防衛力について、前述した「力の空白論」のみでなく基盤的防衛力とは本格的侵略の事態へ対応できる基盤的なものと解釈されてきた。さて冷戦期には考えてもいなかった弾道ミサイル、テロ、サイバーの脅威が現実の問題として浮上してきている。弾道ミサイル防衛、テロ対処、サイバー防御等は本格的侵略の事態(有事)においても考えておかなくてはならない機能であろう。その意味で、これらの機能は基盤的なものであるという主張もある。しかしサイバー攻撃といった事態への備えは平時においても即十分に機能するものでなくてはならない。またミサイル防衛についても今回の北朝鮮ミサイル発射にみられるように限定的ではあるにせよ平時から十分に機能するものでなくてはならない。テロ対処についても然りである。このように平時から即機能すべき防衛力と本格的侵略事態への備えの部分の機能とを基盤的防衛力という坩堝に入れて「糞味噌」一緒に混ぜ繰り返すことは避ける必要がある。この際一度「基盤的防衛力」という用語の呪縛から解放された方がよいと考える。
  3. 防衛産業基盤の強化については従来から繰り返し言われてきているが、状況は改善されないばかりか、防衛産業がむしろやせ細っている傾向にある。この問題については官民挙げて真剣に考えなくてはならない時期に来ている。
  4. 最後に日米同盟の方向について総括する。対等な日米同盟という言葉が独り歩きしている。そして一つ一つの案件についていいとか悪いとかという議論がなされているような気がする。成熟した日米同盟を実現するための議論は、スライドにおいて諸要素を挙げてみたが、これらを個別に論じていくのではなく、トータルとして評価し「メリハリのきいた」政策パッケージとする必要がある。

質疑応答

Q:海外派遣が本来任務になる中で、外務省と防衛省の理想的な関係は?
 外交の一元化という原則から、やはり外務省が適切な外交コンセプトを策定することが第一であるが、外務省だけですべてができるわけではない。これまでも各組織間で忌憚のない意見交換がなされていると思う。

Q:防衛費の1パーセントシーリング枠について見解を伺いたい。
 防衛費についてはここ何年か継続削減されてきており、現状の防衛費は1%枠にも届かない状況である。防衛力整備のみでなく現在の部隊の維持、活動経費面でも限界にきている。1%についていえば、もともと1%という概念事態がそれほど論理的なものではないと考えている。

Q:国際連携の際、語学力が必要であるが、予算の確保から行って実際に実務に対応できる人材を育成するにも、すぐには効果が現れるものではない。この点についてご意見を伺いたい。
 まったくそのとおりである。加えて、法律家やコンピュータ専門家など、語学に留まらないスペシャリストがより必要となる。オペレーションレベルでもそうだが、特にハイレベルの政策協議の場においては高度な語学能力が必要である。

Q:基盤的防衛力という考え方から脱却して、新しくどのような防衛力を築いてゆくべきとお考えか?
 一番必要なのは輸送力の整備である。「どこ」に「どれくらい」「どのような」兵力を「いつまでに」展開するのか、各種の事態に対応するためにはまず輸送力がなければならない。予測のつかない脅威への対応が課題となっている今日においてその重要性はなおさらだ。

Q:海上保安庁法25条の自衛隊法との矛盾を解決するための方策は?
 非常に難しい課題である。海上保安庁法25条では海上保安庁は軍事作戦を禁止されている。しかし有事においては防衛大臣が海上保安庁を統制することになっている。これは昔から指摘されている矛盾である。しかし今回ソマリア沖での護衛艦に海上保安官が同乗していることは大きな協力関係の強化につながると期待している。

Q:防衛産業が主に民間によって担われている。やはり重要な物は官と民が協力するなかでしか生産できないと思う。また輸入兵器に依存するのは危険であると思う。諸外国は最新技術や兵器は外部に出さないものである。防衛産業全般の育成についての課題も含め見解を伺いたい。
 まさにその通りであると思うし、もっと危機感が必要である。やや話がそれるが、少子高齢化の中で人的資源はできるだけ民間の力を活用するという考え方が必要である。自衛官は本当に自衛官でしかできないような任務に特化してゆくのが一つの考え方である。また、自衛隊OBをもっと有効に利用できるはずである。

第3日目:「米軍再編と日米同盟」

日  時
2009年10月1日(木)
講  演
中谷 元 氏(前 防衛庁長官)
長島 昭久 氏(防衛大臣 政務官)
レイモンド・グリーン 氏(在沖縄米国総領事)

 第3回は10月1日(木)、都内で「米軍再編と日米同盟」というテーマで開催した。自民党衆議院議員中谷元氏、防衛省大臣政務官長島昭久氏、米国在沖縄総領事レイモンド・グリーン氏にご講演を頂き、続いてパネルディスカッションを行った。司会者は西原正当研究所理事長が担当した。

  シンポジウムは司会者の挨拶に続き、中谷氏、長島氏、グリーン氏の順で講演が行われた。

 中谷氏は日米同盟が世界で最も大切な二国間同盟であるとして、日米間の防衛協力のための法整備や、海兵隊のグアム移転に伴う要衝戦略の必要性について論じた。また民主党政権への期待と注文などにも言及した。

 長島氏は政権与党となった民主党の政策を説明しながら、「日米関係の活動の射程はグローバル、かつ活動の内容はフルスペクトラム」という表現を使って、関係の深化についての具体論を展開した。在日米軍再編問題についての課題にも触れ、進展へ意欲を表明した。

 グリーン氏は今日に至る在日米軍再編合意の経緯や現状に触れながら、日米関係を中長期的に維持してゆくことの重要性や、多くの基地を抱える沖縄への配慮にも言及した。在日米軍再編とは、「日米間の同盟をより平等かつ効果的にするものであり、これは冷戦後の最初の試みであったとした。しかし、これはそのための『最後の試み』ではないと」強調したのが印象的であった。

 講演に続いて3氏によるパネルディスカッションが行われた。司会は当研究所の理事長が担当した。 民主党の安全保障政策や対米関係、アフガニスタン支援の方策などが議題にのぼり、熱を帯びた議論になった。

 最後に会場からの質疑とそれに対するパネリストからの応答が行われた。
 会場からは、インド洋の給油支援を延長しない場合の代替案や2010年に予定されている米国の「4年ごとの国防方針の見直し(QDR)」について質問があった。

 日米同盟の重要なターニングポイントの時期に活発な議論が行われ、会場は熱気に包まれた。各パネリストには大きな拍手が送られ、セミナーは幕を閉じた。

第4日目:シンポジウム「防衛産業と日米同盟」

日  時
2009年10月8日
講  演
西山 淳一 氏(三菱重工業 航空宇宙事業本部 顧問)
増田 義一 氏(防衛省 経理装備局 装備政策課長)
ジェフリー・ブルーム 氏(米国国防副長官室 / ジャパンデスク)
及川 耕造 氏(経済産業研究所 理事長)

 第4日目の模様は、レポート形式にて日本語および英語にてまとめております。

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