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【2016年】

年頭に当たって

年頭に当たって

新年明けましておめでとうございます。
 昨年も国際政治は多くの国際緊張を生みました。ロシア、IS「イスラム国」、中国などによる、国際秩序を軍事力で変えようとする一連の出来事の中で、日本は集団的自衛権の制限的行使を認めた新たな安保法制を決定して日米同盟の強化に向かう動きを見せました。日本が東アジアの平和と安全により一層寄与できることを期待します。
 本年も研究所は、これらの情勢の的確な分析をしながら出版、講演会、研究会活動および若手研究者の育成などに努めたいと思います。皆様方のご指導ご鞭撻を賜りたくよろしくお願い致します。

平和・安全保障研究所
理事長 西 原  正

(2015年1月1日)
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【2015年】

年頭に当たって

「日米越3カ国協力会合」終了

第7回 ハリファクス・フォーラムに参加して

年頭に当たって

 新年あけましておめでとうございます。
 米露中日間の関係が緊張し、東アジアを始め、中東やアフリカでの領土や民族、宗教集団間の紛争が絶えない情勢を見ながら新年を迎えますが、平和・安全保障研究所は本年も新旧の外交・安全保障問題を分析し、展望していきたいと思います。7月の年報『アジアの安全保障』発刊、毎月の月例研究会、春と秋の講演会(東京)、冬の関西安全保障セミナー、若手研究者のための日米パートナーシップ・プログラム、日韓戦略協力対話などの年間事業を積極的に推進してまいります。本年も変わりないご支援、ご協力をいただきたく、よろしくお願い致します。

平和・安全保障研究所
理事長 西 原  正

(2015年1月1日)

【2014年】

第3回 日米越協力会議が開催される

日本外交の株は上がった
-シャングリラ・ダイアログに出席して-

第8回 日韓戦略対話、9月17日開催、深まった議論

ハリファックスの国際安全保障討論に参加して

第3回 日米越協力会議が開催される

 第3回日米越協力会議が去る2014年4月3日にワシントンで開催された。これはCenter for the National Interest(米国)、 Institute for Foreign Policy and Strategic Studies(ベトナム外務省傘下)、 平和・安全保障研究所(日本)によって実施されているもので、今回は、中国の防空識別圏(AIDZ)に関する評価、将来の展開予測などを中心に議論が行われた。平和・安全保障研究所からは西原正理事長および永岩俊道氏(元航空自衛隊空将)が参加した。ワシントンのシンクタンクの研究者や大使館関係者も参加し、総勢約40人の会合となった。

 中国が2013年11月23日に発表した防空識別圏に対しては、参加者は中国が識別圏をあたかも領空のように扱っていて間違っているとの認識で一致したが、それを中国の識別圏に対する認識不足によるとする見解と、識別圏は中国の接近阻止、領域拒否戦略の一環だとする見解に分かれた。また習近平国家主席が、海軍ばかりでなく空軍にも国家防衛の役割を与える必要があったとする説も紹介された。

 また中国空軍は防空識別圏に侵入する不明機に対処する緊急発進能力(スクランブル)はないだろうという見解も出された。防空識別圏設定のあと、中国側が、米国がB-52爆撃機を飛行させたことや侵入した空自戦闘機に対して中国機がスクランブルをかけたことを発表したが、いずれも国内向けのもので、実際には行われなかったことも紹介された。

 中国の防空識別圏に対する関係国の反応に関しては、日本、米国、オーストラリア、ベトナム、フィリピンは一様に厳しい反応を示した。しかし韓国は中国と領有権をめぐって係争中の離於島が中国の防空識別圏下に入ったことには強い不満を表明したものの、全体としては比較的緩やかな反応であったことが指摘された。ベトナムやフィリピンは、中国が南シナ海にも防空識別圏を設定することを警戒しはじめた。

 識別圏の今後の展開に関しては、中国はこの識別圏を発表したことで国際的批判を受け、外交的に孤立したので、今後は慎重に進めるであろうとする見解と、今後は南シナ海に同様の防空識別圏を設定するであろうとする見解が議論された。

(2014年4月14日)

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【2013年】

ハリファックスの国際安全保障討論に参加して

実り多かったハノイの日米越協力ワークショップ

領土懇の報告書提出を終えて

久しぶりのモスクワ訪問から

ハリファックスの国際安全保障討論に参加して

カナダが生んだテレビ討論形式の会議

 去る11月22-24日にカナダのハリファックスで行われた第5回国際安全保障フォーラム(Halifax International Security Forum, HISF)に参加する機会を得た。このフォーラムは2009年にハリファックス出身の当時の防衛大臣(現法務大臣)Peter MacKayのイニシアティブで始まったもので、現役大臣や有力議員、現役および退役軍人、民間シンクタンク、NGOなど、さまざまな資格で参加する人たちが招かれた討論の場であった。今回約300人の参加者があり、公開セッションでは、4~5人の討論者と司会者が中央に位置し、それを囲むように観覧席があり、そこに参加者が座るという形式であった。長々としたスピーチはなく、いきなり司会者の直截な質問が討論者に投げかけられ、短く応えながら討論を進めていた。ちょうどテレビ討論のようであった。実際生中継で放映され、かつYouTubeにも載せていた。

有力指導者の参加

 参加者の中には、Chuck Hagel米国防長官、John MacCain 米上院議員、Moshe Yaalon イスラエル国防相やGeneral John Allen 元駐アフガニスタン米軍最高司令官兼NATO軍司令官(ISAF)、Kevin Rud 元オーストラリア首相など、そうそうたる指導者が来ていた。またイラン、アフガン、テロなどのセッションの討論の充実を図るためだと推察したが、アフリカ、中東(アフガニスタンを含む)、南米からも有力者が招かれていた。もう一つの特徴は、民主主義国の人たちの会合となっており、中国は招かれていなかったことであった。したがって民主主義国というには疑問のあるロシアも来ていなかった。

北大西洋諸国中心だが、中国への関心は高い

 しかし東アジアからは、日本以外に、韓国、フィリピン、インドネシアぐらいしか来ておらず、北大西洋地域中心の参加者による会合であった。したがって扱われた12の公開討論のテーマも北大西洋諸国の関心事になっていた。しかし中国の存在は大きく、私が公開討論に出た「From India to the Americas」を含め、他のテーマのセッションでも、やはり中国がしばしば話題になった。会合が始まったところで、中国の東アジアにおける防空識別圏設置発表と重なったことも大きかった。

アジアのイニシアティブによる会合も重要

 このハリファックスの会合にはもっとアジアからの参加があることが重要である。ハリファックスと並んで、安全保障関連の国際会議やフォーラムはいくつかある。シンガポールのシャングリラ会議、スイスのグローバル・レビュー会議(いずれもロンドンの国際戦略研究所IISS主催)、ミュンヘンのミュンヘン安全保障会議などである。アジアの国が主催するのはクアラルンプールのアジア太平洋安全保障会議ぐらいである。しかし国際政治の重心がアジア太平洋地域に移り始めていることを考慮すれば、アジアのイニシアティブによる国際的会合がもっとあってよいと痛感した。

(2013年12月4日)

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【2012年】

ぎくしゃくする日韓関係日米韓会議に出席して

ぎくしゃくする日韓関係-日米韓会議に出席して

 去る5月21,22日にニューヨークで日米韓会議があり、私も招かれて参加した。ニューヨークのNational Committee on American Foreign Policy が主催したもので、これまでもソウルなどで行ってきた。約30名の参加者のうち、政府関係者は日本の外務省、ニューヨーク総領事館、米国務省、韓国外交・安保研究院、国防分析研究所、ニューヨーク総領事館などからの参加者約10名で、残りは学者、元外交官、ジャーナリストなどで、いわゆるトラック1.5であった。

 会議は誰がどんな発言をしたかは外部に出さない方針(いわゆるチャタムハウス・ルール)で行われたので、ここでもそれを尊重したい。全体としては、北朝鮮の核や体制の安定、中国の外交政策、軍事力増強、内政不安定、日米同盟、米韓同盟などの諸問題が議論された。中国国内の不安定要因が増大していること、北朝鮮の体制が崩壊することはないが、制裁の効果があり内部不満が増大していること、韓国の李明博大統領あとの政権がふたたび北に融和政策をとるかもしれないこと、そして4月末の野田首相の訪米が成功したことで、鳩山、菅政権下で弱化した日米同盟が回復したこと、などの評価があった。

 懸念されたのは、日米韓の安全保障関係を推進する利点はそれぞれの国が認めるにもかかわらず、日韓関係がぎくしゃくし、それが大きな阻害要因になっていることである。5月半ばに韓国の国防相が慰安婦問題を理由に訪日をキャンセルしたことが、当然議論になった。日韓の首脳レベルの会合で、物品役務相互融通協定(ACSA)や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を進めることが合意されたにもかかわらず、防衛相の訪日中止で協定の署名が遅れるという状況になっている。日韓には他にも歴史問題があり、今後これらが二国間、あるいは三国間の安全保障関係に悪影響を与えないように、日韓は知恵を絞っていくべきだと痛感した。

(2012年5月26日)

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